シリーズRAF日記/新型コロナ対応とRAF(第4回<2020年11月21日>)

シリーズRAF日記/新型コロナ対応とRAF(第4回<2020年11月21日>)

プロモントリー・フィナンシャル・ジャパン 大山剛

今回は前回説明したVBDS(可視化、バランス、決定、実行)からやや脱線し、我が国の新型コロナへの対応に関するRAF的感想を示したいと思います。

欧米で止まらなくなってきた新型コロナの新たな波が、遂に日本にも及んできました。私どもが定期的に公表している新型コロナレポート(詳細はhttps://covid19.promontoryfinancial.jp/ 参照)でも9月頃から指摘してきた(1を大きく上回る)再生産数の上昇が、当初の北海道そして大阪から、11月初からは東京にも波及しており、数日前に公表したレポートでは現状の人々の移動状況が続く限り、12月上旬頃には日本も「イタリア化」(感染者のオーバーシュート⇒医療崩壊の危機)が避けられないと警告しました。

こうした中、やや気になったのは、Googleが先般初めて公表した都道府県毎の感染者数や死亡者数の予測に対し、政府が「聴取」したというニュースです。特に北海道に関しては、先行き28日間で120名近くの死亡者数が出るというショッキングな指摘が、「go to」 政策を推進する政府にはやや気になったのかもしれません。Googleが今回公表した推計は、ハーバード大学の協力を得ながらAIを用いて分析したものであり、それだけ重みがあったということなのでしょうか。

もっとも、こうした結果は実はAIを用いるまでもなく、最近の数字の推移を標準的なモデルにインプットしただけでも出てくる極めて常識的な数字ではなかったかと私は感じています。上記で紹介した新型コロナ感染レポートで用いたモデルにより、例えば北海道における先行き一か月の新型コロナによる死者数を推計すると(11月14日現在)、やはり100名超という結果が出てきました。果たして政府が驚いたのは、こうした数字の結果だったのか、或いはこうした数字がGoogle+AI+ハーバード大学という「権威の塊」のような主体から国民の目に晒されたことなのか…。

世界を広く見渡すと、新型コロナに係るリスクに対する政府の許容度(新型コロナリスクに対するリスクアペタイト?)は、大きく分けて4パターン程あるのではないかと思います。具体的には、①中国(許容度ゼロ)、②日本や韓国(低い許容度)、③欧米(比較的高い許容度)、④ブラジル等(許容)の4つです。これらの何れが正しいのかという議論はナンセンスで、少なくとも民主国家においては、こうした政策は政府にとっての最大のステークホルダーである一般国民の最大公約数的期待を反映したものだといえます。

興味深いのは同じ民主国家でも、日本と欧米でその許容度はかなり異なることです。実際、米国や欧州では、人口対比でみて日本の50~100倍程度の日次の新規感染者や死者が発生しても、(医療崩壊というよりは社会崩壊を起こすことなく)正常な社会機能が維持されているというのも驚きです。また、こうしたコロナリスクに対する許容度の違いは、経済活動に対する打撃の程度にも現れています。欧米日何れの主要国のGDP成長率をみても、本年2Qに大きく落ち込む一方で3Qには相当部分を取り戻していますが、3Qを終わって前年比で一番落ち込んでいるのが日本経済という結果になっています。結局コロナリスクのテイクに一番保守的であった日本は、マクロ経済面で一番大きなリスクをテイクしてしまったともいえます。 

Googleが示した先行きの死亡者数の数字(これはまた我々のモデルが示すものとも似通っていますが)に対し政府が警戒したのは、現状の政策を継続した場合、日本が直面するコロナ禍の程度が従来の日本政府のリスクアペタイトの「上限」を大きく超える可能性が示されたからなのかもしれません。もっともそうした中でも、政府がこれまでの打ち出したgo to 政策を容易に変えられない背景には、コロナリスクを抑制するためにこれまで渋々テイクしてきたマクロ経済リスクに対するアペタイトも、実は徐々に上限に近づいていることが挙げられます。

そういう意味では日本政府は早晩、大きな選択を迫られる可能性があります。すなわち、これまでのようなコロナリスクに対する保守的な姿勢を維持して経済を犠牲にするのか、或いはコロナリスクへの許容度を欧米並みに上げて経済への打撃を抑制するのか。コロナ禍が長引き、経済も財政も疲弊するにつれ、政府が(リスクアペタイトのリバランスという)不都合な真実を国民に示さざるを得なくなる日が近づいているような気がします。