シリーズRAF日記/ RAFはPDCAをVBDSに変える?(第2回<2020年10月17日>)

シリーズRAF日記/ RAFはPDCAをVBDSに変える?(第2回<2020年10月17日>)

プロモントリー・フィナンシャル・ジャパン 大山剛

本年8月11日に日本経済新聞に掲載された論説記事に「不測の時代の良い会社 まだPDCAですか」という記事がありました。将来が不測の時代、PDCA(計画、実行、評価、改善)モデルによる経営の回し方では外部環境変化に十分対応できないというのです。代わりに提示されたのがODDA(観察、適応、決定、行動)モデルで、これはシリコンバレーのIT系企業等で活用されているようです。前者の経営の回し方が、過去の経験に基づく結果の積み重ねで漸進的改善を積み重ねる「連続的」なものである一方、後者は外部環境の変化の「観察」、そしてそこで発見した新しい環境への「適応」に重点を置く「非連続的」なもので、外部環境の突発的な変化への対応が可能となります。確かに、予想しなかったような外部環境の大変化が日常となりつつある今、過去の経験の「評価」⇒「改善」に基づき経営を回していては、気が付いた時には市場が蒸発しているかもしれません。

私は、RAFの世界も、PDCAよりはODDAにより似ているのではないかと思います。勿論、RAFの世界の経営の回し方が一つである必要はありません。RAFの中でも漸進的改善を志向する経営もあれば、フォワードルッキングで非連続的改革経営もありえます。但し、RAFの大きな特徴であるステークホルダーの期待の把握という側面は、「評価」➡「改善」から「計画」に向かうプロセスよりも、まずは変わり果てた世界をじっくりと見渡す「観察」という表現の方がしっくりくるように思います。ODDAの難点を上げるとすれば、元々の適用先である空中戦のパイロットならいざしらず、企業経営者にいきなり「観察」から「適応」せよと命じても、なかなかぴんと来ないことでしょう。そこが比較的直観に訴えやすいPDCAとは異なるところです。それではこのODDAをRAFの世界で考えた場合、それぞれのプロセスをどのような言葉で置き換えれば、経営者にとってもピンと来るものになるのでしょうか。

私が考えるRAFは、ODDAに近い、VBDSというものです。これは

  • Visualization(<激変する外部環境の変化とこれに基づくステークホルダーの期待の>可視化)
  • Balance(<様々なステークホルダーの期待の>バランス調整)
  • Decide(<バランスをとった様々なステークホルダーの期待に基づく>リスクアペタイトの決定)
  • Satisfy(<リスクアペタイトを満足させるための>経営戦略の策定と実行)

より構成されます。ODDAの「観察」は「可視化」としました。じっくりと外部環境変化を観察するだけでなくこれを可視化し、主要ステークホルダーと問題意識を共有することがRAF展開には欠かせないためです。その上で「適応」(英語ではorient)は「バランス」としました。自らの生死を賭けて自分自身で即座に行動を決断することが求められる空中戦のパイロットとは異なり、経営者の外部環境変化への適応は結局、絶えず変化する異なるステークホルダーの様々な「期待」に対し、どのように答えるのかに尽きるからです。なお、最後の「決定」「実行」はODDAの「決定」「行動」とほぼ同じです。

ここでいうステークホルダーとは、株主や債券保有者/格付機関、顧客や取引相手、従業員、そして社会一般やこれをある程度代表する監督当局を指します。企業の経営者は、これらステークホルダーの「エージェント」として企業経営に当たるわけですが、時に互いに対立する様々なステークホルダーの期待の集合和を如何に最大化するが経営にとっての最大の課題となります。RAFとは結局これを「見える化」するプロセスであり、そのためのプロセスをPDCA風に分かりやすく示したのが、上記のVBDSだと私は考えています。

次回以降は、このVBDSのプロセスに沿いながら、金融機関や企業経営者、さらには公的機関や国家の運営者が直面する様々な問題を取り上げ、仮にRAFの中で処理するとした場合にどのような論点が出てくるのかを議論したいと思います。皆様とお会いする場面等で忌憚なきご意見を頂ければ幸いです。